個人再生で家を残すことができた|その条件や方法を解説します

私は2019年12月末に個人再生(小規模)の再生計画認可決定が裁判所より通知されました。これにより翌年1月から返済を始め、現在は丁度半分を返し終えたところです。

当時の私は、借金問題に苦しみながら未来に絶望していました。

そのようなときに、偶然あるサイトで借金問題は法律事務所に行けば相談できることを知り、近くの法律事務所の門を叩きました。

今思えば、私のその決断が人生の大きな転機につながったことを確信しています。

個人再生」という言葉を知ったのも、それがきっかけでした。

弁護士の先生と、事務所のスタッフの方はとても親切に対応してくださり、指導される内容に忠実に従うことによって、およそ1年の準備期間を経て再生計画認可決定を頂くことができました。

あなたがもし、借金の問題で苦しんでいらっしゃるのなら、迷わず勇気を持って専門家(弁護士や司法書士)に相談することをお勧めします。

私がそうであったように、借金の苦しみから開放されて、人生に新たな意味を見いだせるようになっていただきたいと心から願いながら、このブログを書き続けています。

今回は、個人再生において私が最も心配した内容である、「持ち家はどうなるのか」について情報を整理して記事をまとめてみました。

あなたにとって、この記事がお役に立つ内容であればこの上もない幸せです。

目次

 個人再生で不動産(持ち家)を残すことができる?

個人再生とは

個人再生とは、借金の返済が困難であると裁判所に認めてもらい、借金額を圧縮し残りの借金を分割して支払う債務整理の方法です。

分割での支払い期間は原則として3年、事情があれば最長で5年としてもらうことが可能です。

個人再生後は、圧縮された債務を支払っていく必要があります。

そのため、将来にわたって継続的に収入がなければ裁判所に個人再生を認めてもらえません。収入が不安定であったり、無職であったりした場合には他の債務整理を検討する必要があります。

個人再生の詳しい内容は、次の記事を御覧ください。
⇒⇒⇒個人再生の手続き|実践的完全ガイド

個人再生で持ち家を残すことができるのか?

個人再生では持ち家を残すことができると説明されることが多く見られますが、実は正確な理解ではありません。

これは、個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項)という制度と関係があります。そして、住宅資金特別条項は住宅ローンが残っているかどうかで利用できるかどうかが決まります。

そこで、住宅ローンが残っている場合と残っていない場合に分けて、不動産(持ち家)を残すことができるか確認してみましょう

住宅ローンが残っている場合|住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の利用

ローンの残っている財産・資産は、競売にかけられてしまったり、引き揚げられてしまうことになるのが原則ですが、例外的に引上げ等を回避できる場合もあります。

住宅ローンの残っている不動産が自宅である場合には、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用することにより、競売を回避して、処分されることを免れる場合があります。

住宅資金特別条項とは、住宅ローンについては従来通りに支払いを続ける(場合によってはリスケジュールすることもある)ことによって、所有する持ち家を手放さずに済む制度のことです。

もっとも、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用するには次のような主な条件を満たす必要がありますので注意してください。

自分が住むための建物であること

住宅資金特別条項を定めるための要件として、その債権が住宅資金貸付債権であることが必要です。

ここで「住宅」と言えるためには、その建物が「自己の用に供する建物」であることが必要です。

要するに、申立てた本人がそこに住んでいないといけないということです。

つまり、投資用として他人に賃貸している不動産などは、住宅に含まれません。

本人が所有している住宅であること

例え本人が住んでいるとしても、その建物の名義が別の人、という場合は「住宅」に当てはまりません。

配偶者など、近親者名義であっても、それは本人の名義ではないので、住宅資金貸付債権とは言えないことになります。

では2名共有になっている場合はどうかというと、その場合は一部であっても所有権を有している為、本人の所有とみなされ「住宅」の要件に該当することになります。

床面積の2分の1以上が自分の居住部分であること

例えば、アパートと自宅を併用している建物や、店舗兼自宅などのケースです。

お店などを構えていて、そのお店の面積が居宅部分の面積よりも大きいような場合は、居住部分は2分の1以下となりますので、要件に該当しないことになります。


住宅を建てたり購入したりするためのローンであること

住宅資金特別条項を利用するには
対象の借り入れが
住宅資金貸付債権であることが要件です。

対象の借り入れは、住宅資金貸付債権である必要があります。

簡単に言えば、家を建てたり購入したりするための借入である必要があります。

いわゆる住宅ローンです。

例えば、自分が経営している事業の借り入れのために自宅を担保にいれた、というような場合は住宅資金貸付債権ではないため、この制度の対象にはなりません。

対象の自宅に、住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと

たとえば住宅ローンを組んだ後に、別の消費者金融からお金を借りるために、同じ自宅を担保にいれたという場合などです。

抵当権という担保権は、設定した順番によって順位が決まっています。

順位1番の債権者はその不動産を競売した際に優先的にお金を受け取ることができます。その後は順位2番、順位3番という順番で受け取ります。

順位が遅れればそれだけ回収の可能性は低くなりますが、設定できる数に限りはありません。

消費者金融のなかには、回収見込みがあまりなくとも高順位の抵当権を設定する会社もありますので、そういった場合は残念ながら住宅資金特別条項を使うことが困難になります。

もし住宅資金特別条項を使わなかったらどうなるか!

個人再生手続きには債権者平等の原則というルールがあります。
この債権者平等の原則とは、同一の債務者に対して、複数の債権者がいる場合は、全ての債権者は平等に取り扱われなければならないという原則です。

例えば、数社から借金をしている場合、個人再生手続きを進めるために司法書士事務所から各社へ受任通知を送って支払いを一旦ストップします。

しかしその内の一社だけは、今まで通りに支払いを継続していった、などといった行為は原則として認められません。

これは偏頗弁済(へんぱべんさい)といって特定の債権者に優先的に返済する行為となり禁止されています。

その為、住宅ローンを組んでいる金融機関にも他と同じように受任通知を発送し、支払いを止めることになります。

住宅ローンの支払いを止めると、当然延滞状態になります。またその延滞が6か月間を超えると、住宅ローンを組んだ際に契約した保証会社が本人に代わって金融機関に代位弁済します。

代位弁済とは、借主が何らかの理由で借金の返済ができなくなったとき、あいだに入っている第三者(保証会社等)が、借主に代わって貸主に借金を返済することです

つまり銀行から保証会社等に債権が移ることになります。

第三者による代位弁済が行われると・・・

今までのように分割で払っていくことができなくなる

保証会社から一括弁済の請求が来るようになる

一括請求をされても当然全額を払えない

その後は保証会社が抵当権を実行していくことになる

結果的に、競売手続きなどにり不動産が売却されてしまう

また、地価の下落や建物の経年によって不動産の価値が減少し、売却代金全額をもってしても住宅ローンを全て返せなかった場合は、残りは全て負債として支払義務が続きます。

その残額は、最終的に個人再生で5分の1などに圧縮することになりますが、大切な自宅を失ってしまうという結果になります。

一方、住宅資金特別条項を利用すると、住宅ローンにに限り他の債権者と分けて支払いをすることができます。

つまり、自宅を維持したまま個人再生の手続きをすることができるのです。

住宅ローンを完済している場合

住宅ローンを完済している場合には、持ち家の価値分は清算されるべき財産として計上されます。
従って、手放さないことは実質的に難しくなります。個人再生を利用する場合には「清算価値保障原則」を満たす必要があるからです。

清算価値保障原則

個人再生の弁済率が破産した場合の弁済率以上でなければならないという原則です。

個人再生をしたときは自己破産したとき以上の金額を、債権者に返済しなければならない制度です。

詳細は次の記事をご覧ください。⇒⇒⇒清算価値保障原則

住宅ローンを完済した持ち家があり、個人再生後も所有しておきたい場合の注意点

個人再生をするためには、持ち家の価値分の借金を返済しなければなりません。

しかし、その場合には返済原資が足らずに、再生計画が裁判所から認められなくなる可能性が出てきます。そうなると別の債務整理を選ぶことになります。

事態を回避するためには、持ち家を処分して返済額を減少させなければならない

持ち家をすべて清算価値に計上すれば、借金額よりも多くなる可能性がある
(例:借金額が500万円に対し、持ち家の価値が1,000万円)

このようなケースを100%弁済とよび、借金額をすべて返済しなければならない

個人再生をするメリットは無い

任意整理などを検討すべき

不動産を所有している人が個人再生手続きを申立てる場合として、次のようなケースがあります。

  1. 抵当権などの担保が一切付いていない不動産
  2. 住宅ローン以外の担保が付いている不動産
  3. 自宅として利用していて、住宅ローンが残っている(抵当権が付いている)不動産

「3.」については既に説明しましたので、ここでは「1.」と「2.」のケースについて詳しく説明いたします。

1.抵当権などの担保が一切付いていない不動産の場合

自己破産の場合は所有している不動産は基本的に売却現金化し、債権者に配当されます。
しかし個人再生の場合は、それとは異なった扱いがなされます。

自宅を売却する必要はない

所有している不動産に抵当権や根抵当権などの担保がついていない場合、原則的に個人再生手続き上はその不動産を必ずしも売却する必要はありません。

この点が自己破産とは大きく違うメリットです。

個人再生は、あくまで再生計画に基づいて借金を3年から5年にかけて分割で弁済して行く手続きです。
従って、申し立てた方の財産を直ちに換価して、債権者に配当するようなことにはなりません。

清算価値として、最低弁済額に影響する

とは言え、不動産を所有している場合には、個人再生手続きでは清算価値の問題が生じます。

申立てた人が財産を持っている場合、その人の財産をの清算価値を計算して、その清算価値を下回る金額には、借金を圧縮する事ができないという原則です。

その為、所有している不動産が高い金額で売れそうな場合は、個人再生で支払う金額も大きく増えてしまいます。

2.住宅ローン以外の担保が付いている不動産の場合

不動産が担保に入っている場合その債権者は別除権を有します。
申し立てた方が所有している不動産に、抵当権や根抵当権などの担保権が付いている場合、その債権者は別除権という権利を持つと定められています。

別除権とは、個人再生手続きとは関係なく行使できる権利のことです。

【民事再生法第53条】  

  1.  再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法 若しくは会社法 の規定による留置権をいう。第三項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。
  2.  別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。

債権者が、申し立てた人の所有不動産に抵当権を付けている場合、その債権は別除権として扱われます。
そうなると、他の債権者の支払いをストップしている間でも、それとは関係なく物件を競売して債権回収を進められることになります。

そのために不動産が売却される可能性が極めて高くなる

個人再生手続きを進める場合、原則としてすべての債権者への支払いはストップすることになります。

そうすると、当然不動産に抵当権などを設定している債権についても支払いができませんので、返済不能状態ということになります。

その債権者は不動産に対して別除権を有しているので、再生手続きの進行とは別に、不動産を競売にかけるなどして換価し、そこから債権を回収することができます。

債権者側は、不払いが起きた時に債権の保全ができるようにと抵当権を付けたのですから、その権利を行使するのは当然のことと言えるでしょう。

その為、ローンが残っている不動産については、原則として別除権の行使により売却されると考えておいたほうがよいでしょう。

別除権協定とは

どうしても不動産を手放せないような場合には、別除権協定という手段があります。

これは、債権者に対して不動産を売却しない旨の了承を得た上で、裁判所からの許可を得て、特別にその債権者に対してのみの支払いを認めてもらうという約定の方法です。

この方法が認められれば、不動産を売却せずにすむ場合があります。

しかし、裁判所側に認めれらるためには厳しい要件があるため、この制度を個人再生で利用している実例は非常に少ないのが実状です。

申立て前から別除権協定がうまくいくという前提で考えることは、危険であると申し上げておきます。

不動産清算価値について|私のケース

自宅(現在居住している)は、 2012(平成24)年に購入しました。妻と私と50%ずつの共同購入です。
購入にあたっては、費用の半分ほどですが住宅ローンを利用しました。

個人再生手続きを始めた、2019(平成31)年1月の査定額(不動産業者による)は2800万円程度。そして、当時の住宅ローンの残金は、1700万円程度でした。

ですから、清算価値は約1,100万円になりました。

一方、私の債権額が約1,330万円でしたから、このままであれば、他の清算価値物件と合わせると、ほとんど100%弁済となり、個人再生のメリットは無くなってしまします。

しかし、先に書きましたように夫婦での共同購入(50%ずつでしたから、清算価値の1,100万円は半分の510万円となりました。

最終的には、私の弁済総額は債権額の57.09%が圧縮され、5,721,841円となり、これを5年で返済することで再生計画認可決定がおりました。

最終返済年月は2024年の10月ですが、現在ちょうど半分を順調に返し終えたところです。

返済はまだ続きますが、以前のように将来に対する絶望感や恐怖感は一掃され、充実した毎日を送ることができています。

<参考> 債務整理を成功させる|断言:専門家の協力無しでは不可能!

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